ふたばの芽〜「秘密の花園」バーネット 著/土屋京子 訳

苦手な冬がやってきました。土日で一気に根雪になり、寒さが身にしみます。
冬特有の鈍色の曇り空が何日も続くと気が滅入ります。けれど、春のあの豊かさと鮮やかさを思うと冬のいうのは耐える時期なのかなと、ぼんやり考えながら雪かきをしています。

今日は先日読んだ本を紹介します。
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「秘密の花園」バーネット 著/土屋京子 訳 (光文社古典新訳文庫)

インドに住んでいるメアリはそこで父母を亡くしたった一人残された彼女は、イギリスのヨークシャーにある大きな屋敷に住む叔父に引きとられます。そこで叔父の亡き妻が大切にしていた庭園を見つけます。

この物語のキーワードは「笑い」と「魔法」。

メアリが屋敷内の広い庭園や菜園を散策していると10年間手つかずにされた庭園を見つけます。彼女はそこを秘密の花園と名付け、毎日通うようになります。日に日に食欲も増えて屋敷の人とも話すようになり、よく笑うようになります。静まり返っていた花園が冬から春にかけて少しずつ色づきはじめ地面の下から草花が芽吹き豊かになってゆく様を見て、彼女は心を躍らせます。
自ら体を動かして行動すること、人と話し声を出して笑い、目の前で生きている自然の豊かさに触れること。こうした体験は当たり前だけれど、とても大事なことです。それが子供でも大人でも。

もう一つのキーワード「魔法」は叔父の息子コリンに関係しています。
病弱で寝たきりのコリンはいつも”良くない魔法”を使っていました。自分は長く生きられない、そのうち死ぬんだと、気のふさぐようなことにばかり思いを巡らして。彼はメアリと出会い屋敷の外に広がる自然の豊かさを知り、だんだんと生きる気力を養ってゆきます。
魔法の第一歩は『きっといいことが起こる』と口に出して言ってみること。
上手くいかないかもしれない、失敗するかもしれない。そういうことを実際に口に出すと、それは”良くない魔法“となって自分の身に降りかかってくる。
大げさかな。自分自身、何度となくそういう悪い連鎖に陥ったことがあるので、ただのフィクションだと割り切れずにいます。
この物語を読んで、小さいけれど大きな力をもらいました。

皆さんもよければ手に取って、暖かい場所でお茶を飲みながらこの物語を楽しんでみてください。

ふたばの芽〜「秘密の花園」バーネット 著/土屋京子 訳」への3件のフィードバック

  1. 冬の雪の中でも、その下にひっそりと芽吹く春を知っているから、雪とも喧嘩をせずにやっていけるのですね。荒野に優しく手を差し伸べるメアリーは、小さな自然の芽吹きを知るからこそ、あどけなく、純粋な姿でその屋敷に通ったのかな?その姿とそこで繰り広げられる言葉が少年の心を和らげていく。魔法をかけて、自分らしい滑稽な失敗をして、たくさん笑いたいと思います。この本の表紙絵、とてもいいですね。大地から芽吹く自分が、自分のハートを抱きしめている。そんなように感じます。

  2. 魔法の第一歩は『きっといいことが起こる』と口に出して言ってみること。
    と書いてあるけど・・・

    第2歩は何だろう。わたしは第5歩までもっていますよ。
    あ、い、う、え、おです。 ありがたい。今が一番いい。運がいいなー。
    笑顔を忘れない。おまえはお前、誰でもないのだよ。
    どうです。わたしの魔法・・・・・

  3. 人との関係が億劫に感じることもあるけど、他者と気持ちを共有したい思いって必ずあるんだと思います。良いことも悪いことも積み重なって今よりもっと成長したいなぁと感じました。

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